学生たちがクラシックの演奏技術の向上を目指して紋別で合宿する「オホーツク紋別音楽セミナー」の管楽器コースが8月15日にスタート。参加したのは、この日、飛行機の東京直行便で紋別空港に降り立った学生や講師陣の一行と、道内や地元から参加する学生あわせて18人。東京からやってきた一行は、台風一過の涼しい紋別に「気持いい」と笑顔を見せていました。
管楽器コースはトランペットとトロンボーンの2部門で、講師は東京芸術大学の名誉教授・杉木峯夫さん(トランペット)、NHK交響楽団首席奏者の栗田雅勝さんらが務め、15日から19日まで5日間にわたって、市民会館、文化会館でレッスンを行いました。
講師の一人、東京芸大・杉木名誉教授は「紋別の過ごしやすい気候のなかで、じっくりと指導していきたい。管楽器コースのこれまでの受講生からは国際コンクールでの入賞者も出ており、受講生の今後の活躍に期待しています。紋別のカニ、ホタテ、かまぼこを食べることも大きな楽しみです」と笑顔で話していました。
17・18日には講師陣に札幌交響楽団の奏者らが加わり、セミナー受講生とは別に「トランペットとトロンボーンのためのサマースクール・イン紋別」を市民会館と文化会館で開催。また18日午後6時30分からは紋別市民会館でセミナー受講生らによるコンサートが開かれました。
弦楽器部門は24日より開催。東京芸術大学学長の澤和樹さん(ヴァイオリン奏者、教授)ら講師陣と、将来の演奏家を目指す学生ら総勢40人が東京直行便で紋別入りし、さっそくレッスンをスタート。
東京芸術大学名誉教授の菅沼準二さん(ヴィオラ)を弦楽器部門全体のプロデューサーとして、総勢14人の講師陣が、24日から27日まで4日間ヴァイオリン21人、ヴィオラ14人、チェロ4人計40人の受講生を指導。今回の目玉は、2014年にヴィヴァルディの「四季」で流麗なヴァイオリン独奏を聴かせたフェデリーコ・アゴスティーニさんの参加。「四季」の演奏で一躍世界的に有名になったイタリアの弦楽合奏団イ・ムジチでのコンサートマスターを務め、現在はニューヨーク州イーストマン音楽院教授として後進の育成にあたっているが、今年度は東京芸術大学の一年客員教授を務めていることから、再訪が実現しました。
講師陣による紋別への還元事業も行われ、毎回恒例の「子ども達のためのピアノ教室」は24日から26日まで、蓼沼恵美子さんが担当。市内のピアノ教室に通う子どもたちが市民会館小ホールのグランドピアノを使い、1回あたり30分程度のレッスンを受けました。蓼沼さんは子どもたちの演奏を聴いて改善点をアドバイス。実際に弾いて手本を示すことも多く、子どもたちは生き生きとした音楽に驚き、大きな刺激を受けていたようです。
いっぽう24日に紋別高校で行われたコントラバス指導では、那須野直裕さんが部員らに基礎の大切さを伝えました。このうち音階練習では、次に弾く音の音階を声に出して歌いながら行う方法を伝授。「練習で脳を最大限に刺激しておくと、本番では余裕ができる」などとアドバイスしていました。
26日には市内小学校2校で音楽教室を開きました。弦楽器部門プロデューサーの菅沼準二さん(東京芸術大学名誉教授、ヴィオラ)や小川有紀子さん(ヴァイオリン)ら講師5人と、受講生のうち3人が訪問し、ヴァイオリン独奏から弦楽合奏まで様々な演奏を聴かせてくれました。
楽器の紹介では「ハッピーバースデーの歌」でヴァイオリン独奏からヴァイオリン2重奏へ、さらにヴィオラを加え、最後にチェロも加わるという形で編成を充実させながら、音に厚みが出て音楽的な表現も豊かになることを実演して楽しませていました。
3人の受講生のうち最年少の長谷川寧々さん(中学3年)は、鳥羽亜矢子さんのピアノ伴奏でチェロ協奏曲を披露。演奏前の笑顔から真剣な表情へと変わり、自分の体と同じくらい大きなチェロを自在に演奏する姿に、子どもたちも身を乗り出すようにして聴き入っていました。
小学生の目の前で独奏したのは初めてで「とても緊張しました」という長谷川さん。「将来、演奏家を目指しているので、こうした演奏の機会はうれしい。楽しそうに聴いてもらえたので、チェロやヴァイオリンにも興味をもってもらえたかな」などと話していました。
29日午後6時半から、市民会館大ホールで今セミナーの集大成となるコンサートが開かれました。講師陣による演奏は、アゴスティーニさんをヴァイオリン独奏者とする「四季」のほか、ピアノ四重奏曲第1番(フォーレ作曲)やシンプル・シンフォニー(ブリテン作曲)。さらに28日の成果発表会で選抜された受講生による新進気鋭の演奏も行われました。
30日には広域紋別病院(午後4時~)と北見信金紋別支店(午後5時半~)の2会場で、講師陣5人が弦楽五重奏を披露する特別演奏会を行いました。